近年、金型や部品の加工において行われるエンドミル加工では、加工効率のさらなる向上を目指した主軸回転速度の高速化や、より複雑で細かい加工が求められている。その一方でびびり振動を回避する切削条件は厳しく、加工効率をさらに上げるためにはびびり振動の回避または抑制が必須課題となっている。 本研究は、びびり振動を回避するために加工効率を犠牲にして切削条件を変えることなく、びびり振動が発生する限界の切削幅を超えて切削してもびびり振動を発生させずに加工が行える制振装置(動吸振器)を開発し、その最適設計法を確立することである。この動吸振器を用いることで、主軸回転数の違いに関わらずびびり振動が発生してしまう限界の切削幅を増加させ、一度により多くの加工をすることで加工時間の大幅な短縮を図る。
近年、自動車業界ではエンジンの静粛性の向上やハイブリット車や燃料電池自動車、電気自動車の開発で走行時の静粛性が格段に上がっており、低速制動時において甲高い不快音が鳴るブレーキノイズの発生が問題となっている。ブレーキノイズは単に騒音となり我々に不快感を与えるだけでなく、ブレーキ系の異常音と誤認させてしまうこともある。このためブレーキノイズに関する研究は数多くなされているが基本的に再現性に欠ける確率的な現象であることや、摩擦現象とブレーキ機構の振動による複雑な問題であることからその発生メカニズムは未だ解明には至っていない。現在ディスクブレーキ鳴きの抑制対策において様々な研究がなされているにも関わらず、ほとんどがある特定の対象系の特定な鳴き周波数に対する限定的なものであり、確実な効果を挙げ得る対策は未だ存在しない。本研究ではブレーキピストン内に封入した圧電素子を高周波加振するディザーコントロールによってブレーキ鳴き抑制を試みる。
口腔外科手術の中で,顎変形症治療のため,顎骨を切削する手術が行われている.顎骨の内部は主に二層構造となっており,骨の表層部は比較的組織が密であり硬質な皮質骨と,内部は比較的組織が疎であり軟質な骨髄によって構成されている.骨髄部に血管や神経が存在するため,皮質骨(硬質層)を抜けて骨髄(軟質層)に切削工具が到達すると,出血や神経損傷による麻痺などの後遺症を発生する恐れがある.そのため,手術の際には血管や神経の損傷を防ぎ,皮質骨のみを除去する手術が求められることがある.現在,回転切削式ハンドピースを用いた骨の切削手術では,軟質層に到達する直前で医師が手元で感じる感覚の変化を捉えて切削終了の判断が行われている.切削工具の軟質層到達の判断は,経験と高度な職人的技術が要求される.手術による後遺症を防ぎ,より安全な手術を行うこと,手術時の客観的な指標を示し誰にでも簡単に手術を行えるシステムの構築が求められている.本研究は,回転切削式ハンドピースを用いた骨切削手術時に,骨の硬質層から軟質層に到達する際,医師が手元で感じる感覚の変化を定量的に評価する方法の確立を目指している。